◆ 怒られるのが、僕らの仕事
京都人の密かな愉しみ第2シーズン「Blue修業中」の幕開けとなるPart3『祇園さんの来はる夏』(2019年放送)。
「怒られるのが、僕らの仕事」
庭師・幸太郎(林遣都さん)はそう言う。
釉子(吉岡里帆さん)の師匠で父、京焼の大家・羊山先生(本田博太郎さん)は厳しい。
一方、パン屋で修行中の葉菜(趣里さん)の師匠、玉井さん(甲本雅裕さん)は気が弱い。
鋭二(毎熊克哉さん)の祖母・タエ(江波杏子さん)は、やさしゅうて深い人だった。
二人はおばあちゃんと孫なのに他人行儀だった。
尊敬の現れかと思っていたが…
- 名女優・江波杏子さんへの献辞 鋭二の祖母・タエを凛とした姿で演じていた江波杏子さんが、2018年に逝去されました。これを受け、この第3話の冒頭には「江波杏子さんに捧ぐ」というナレーションとともに、劇中でもタエさんの葬儀の場面が描かれました。現実の別れを物語に組み込んだことで、残された鋭二の孤独と成長が、より一層リアルに視聴者の胸に迫るものとなっています。
- ヒロイン・釉子役のバトンタッチ 第2話まで釉子役を務めていた相楽樹さんが芸能活動を休止されたことに伴い、この第3話から吉岡里帆さんへとキャストが交代しました。当初は驚きの声もありましたが、吉岡さんが演じる「より情熱的で、恋にも仕事にも真っ直ぐな釉子」は、シリーズ後半の物語に新しいエネルギーを吹き込んでいます。
全シリーズについて詳しくはこちら➡『京都人の密かな愉しみ』とは ― 美しい映像と音楽、季節をめぐる祈りと暮らし。その全体像をじっくり解説 ―
第2シリーズのまとめはこちら➡ 『京都人の密かな愉しみ Blue 修業中』とは?全5話あらすじと登場人物シリーズ完全まとめ
◆ あらすじ
■ タエの死と、血のつながり
鋭二の祖母であり師匠だったタエが亡くなる。
通夜に現れた幸太郎の棟梁・美山清兵衛(石橋蓮司さん)は語る。
タエはかつて勤め人と所帯を持ったが別れ、大原へ。
京野菜作りに生き、一流料理人に認められる存在になった。
子供はいなかった。
みんな孫だと思っていたが鋭二は血が繋がっておらず、親戚でもなかった。
本物の養子は、仏壇の遺影――松陰真司。
血縁にこだわっていたら、伝統は守れない。
■ コンチキチンが鳴る
コンチキチン。
それは祇園祭の鉦(かね)の音。
庭仕事中の幸太郎も、
羊山窯の釉子も、
萩坂の甚(矢本悠馬さん)も、
心ここにあらず。
祇園祭が近づくと、京都人は落ち着かない。
■ 山鉾町
祇園祭には34基の山鉾がある。そのうち祇園囃子を奏でるのは14基。
甚は壬生寺で綾傘鉾・棒振囃子の稽古。
幸太郎は放下鉾で笛を吹く。
7月1日「吉符入(きっぷいり)」で祭りが始まる。
棒振踊りの太鼓がぎっくり腰になってしまい、甚に話が来る。
踊りながら叩かなくてはいけないので、無理だと断っていたが、きっと女将さん(高岡早紀さん)も見る、という家族の言葉に乗せられて引き受ける。
■ ちまきと供養
松陰家では太子山と橋弁慶山のちまき作りを手伝ってきた。
ちまきは郊外の農家が編んでいる。
鋭二はタエのやり残したちまきを編むことにする。
葉菜が仕事終わりに大原までちまき編みの手伝いにやってくる。
太子山のちまきは真司のための供養。タエの甥御さんの息子で養子だった。
真司は大学の山岳部で鋭二と出会ったが、
滑落し、命綱を握る鋭二に「離せ」と言い、最後に祖母の事を頼み自ら綱を切った。
鋭二は、罪を抱えたまま生きていた。
一方、釉子は葉菜に騙され、霰天神山のちまきに「縁結び」の御利益があるからと飾り付けの手伝いをしていた。
しかし霰天神山の御利益は無病息災・火除け・雷除け。
縁結びのちまきは――保昌山。
葉菜は罪滅ぼしに保昌山のちまきを買ってあげる約束をする。
宵山は、京都にとってクリスマスイブのようなもの。
窯元の先輩・甲田(田中幸太朗さん)が好きな釉子は、宵山にデートすると結ばれるというジンクスを信じて期待している。
■ 恋の行方
釉子は甲田を宵山に誘うが、家族が宵山に奈良から出てくるからと、決まったのは宵々山。
保昌山のちまきを買った葉菜だったが、宵々山では釉子に渡せるタイミングがない。
釉子から「ちまきに頼らなくても上手いこといきそうな気がする。 あんたの縁結びに使い」
と言われ、「宝の持ち腐れ」とちまきを見つめる葉菜だが、
偶然、鋭二に行き会う。
放下鉾の幸太郎の笛を一緒に見に行くことになり、こっそり喜ぶ葉菜。
提灯がともる路地を歩きながら、葉菜は鋭二に話します。
「祇園祭の時期は暗い道を歩いていたら、神様に会ったりするとおばあちゃんが言ってた」
宵々山に浴衣デートをした釉子と甲田。翌日の宵山当日。
日和神楽を見に歩く町で、甲田が妻子といるのを釉子は目撃してしまいます。
泣き崩れる釉子。
「お祭りの日に泣いたらあかん」
梅の花飾りをくれる子供。しかし姿は消えてしまいます。
■ 祇園祭
放下鉾の幸太郎、踊りながら太鼓をたたく甚、
そして、今年から太子山を担ぐことになり、法被をまとった鋭二は巡行に参加します。
葉菜も霰天神山のちまき売りを手伝います。
祇園祭は受け継がれていきます。
◆ 祇園祭解説 ― 祇園さんの来はる夏
祇園祭(ぎおんまつり)とは?
千年以上の歴史を持つ、八坂神社の祭礼です。7月1日の「吉符入り」から31日の「疫神社夏越祭」まで、1ヶ月間にわたって様々な神事が行われます。もともとは平安時代に疫病退散を祈って始まった「祇園御霊会」が起源です。
山鉾(やまほこ)と山鉾町(やまほこちょう)
- 山鉾: 祭りの主役となる豪華な出し物の総称。「動く美術館」とも呼ばれます。大きな車輪がついた巨大な「鉾(ほこ)」と、それより一回り小さく、松の木などを立てた「山(やま)」があります。
- 山鉾町: 特定の山鉾を維持・管理している町内のこと。それぞれの町衆が誇りを持って、代々祭りを支えています。
お囃子(おはやし)・日和神楽(ひよりかぐら)
- お囃子: 鉾の上で奏でられる笛・鉦(かね)・太鼓の音楽。通称「コンチキチン」。
幸太郎は放下鉾のお囃子で、実際宵山に鉾の上で笛の演奏シーンがありました。
- 日和神楽: 巡行の前夜(宵山の夜)、翌日の晴天を祈って各町の囃子方が御旅所などへお囃子を奏でながら向かう神事。夜の京都に響くお囃子は非常に幻想的です。
厄除け「ちまき(粽)」の秘密
- 意味とご利益: 祇園祭のちまきは、食べるものではありません。笹の葉で作られた「厄除けのお守り」で、玄関先に吊るして一年間の無病息災を祈ります。
- 由来: その昔、蘇民将来(そみんしょうらい)という貧しい男が、宿を貸した牛頭天王(ごずてんのう)から「お礼に、お前の家系を疫病から守ろう」と約束された伝説に基づいています。ちまきには「蘇民将来子孫也(私は蘇民将来の子孫です)」という札がついています。
- 作り方: 藁(わら)を芯にして笹の葉を巻き、イグサで縛ります。劇中でも、鋭二たちが一本一本手作業で作る、地道で根気のいる作業が描かれています。
- 保昌山のちまき: 平井保昌(ひらい やすまさ)が、恋い焦がれる和泉式部(いずみしきぶ)のために、禁裏に忍び込んで梅の枝を折ってきた……という恋物語にちなんでいます。
- 「縁結び」:保昌山のちまきには、可愛らしい梅の花が添えられており、恋愛成就を願う人々が列をなします。
釉子が神様かもしれない女の子にもらった梅の花飾りは、保昌山の梅の花に似ていました。

甚がおすすめしていた、ご利益が沢山ある綾傘鉾のちまきを購入。
宵山(よいやま)・宵々山(よいよいやま)と山鉾巡行
- 宵山・宵々山: 山鉾巡行の前夜(16日)を宵山、その前々日(15日)を宵々山と呼びます。駒形提灯に灯がともり、祭りの情緒が最高潮に達する夜です。
- 山鉾巡行(やまほこじゅんこう): 祭りのハイライト。17日の「前祭(さきまつり)」と24日の「後祭(あとまつり)」があり、豪華な山鉾が京の街を練り歩き、街の邪気を集めて清めます。
鋭二が太子山を実際に担いで巡行する姿がエンディングで流れます。
- 神輿(みこし)こそがメイン: 山鉾が街を清めたあと、その日の夕方に行われる「神幸祭(しんこうさい)」が本当のメインイベント。八坂神社の神様がお神輿に乗って街へとお出ましになるのです。
◆ 登場ロケ地
楊谷寺(あじさい)
幸太郎たちが庭仕事をしているお寺。5000株ものあじさいをみることが出来ます。
壬生寺
綾傘鉾の棒振囃子の稽古場所として、壬生寺が登場します。
放下鉾
幸太郎のお囃子の稽古場所、鋭二、葉菜が宵山に鉾の上での演奏を見物に行く。
太子山
鋭二がちまき編みを手伝っている。今年からは担手としても参加。

綾傘鉾
甚が棒振囃子をつとめる。

千本釈迦堂(陶器供養会)
毎年7月9日~12日に境内一帯で陶器市が開催される。
八坂神社
祇園祭は八坂神社の祭礼。

作品をもう一度味わいたい方へ
【京都人の密かな愉しみ】
【京都人の密かな愉しみ Blue 修業中】
阿部海太郎さん【Cahier de musique 音楽手帖】
音楽を担当されている阿部海太郎さんのアルバム。「京都人の密かな愉しみ」から「沢藤三八子」「京都、第一景」「京都、第二景」「京都、第三景」「エドワード・ヒースロー」「京都、第四景」そしてエンディングテーマ・武田カオリさんが歌う「京都慕情」が収録されています。
阿部海太郎さん 【ピアノ撰集-ピアノは静かに、水平線を見つめている- 】
阿部海太郎さんのピアノ楽譜集で「京都人の密かな愉しみ」から「エドワード・ヒースロー」と「ミヤコ・サワフジ(沢藤三八子)」が収録されています。
大原千鶴さん【大原千鶴のいつくしみ料理帖】
大原さんのお料理コーナー、松尾アナウンサーと楽しくお話しされながらささっと作られていて本当に大好きです。
◆ 「祇園さんの来はる夏」まとめ
第3話「祇園さんの来はる夏」は、単なるドラマの枠を超え、京都という街が守り続けてきた「祈り」と「誇り」を私たちに教えてくれます。
私自身、この作品に出会ってから実際に3度、祇園祭へ足を運びました。 ドラマで描かれた通り、山鉾町には子供たちの澄んだわらべ歌が響き、お囃子の音、会所で間近に見る鉾や、ご神体、懸装品。
フィクションの中に「本物の京都」が息づいている。それこそが、この回が多くのファンに愛される理由なのだと肌で感じました。
そして、祭りの熱気に背中を押されるように動き出した、釉子の失恋と、葉菜と鋭二の恋。 「好きや…(しばしの間)…こういう道を歩くこと」 葉菜の一言に、鋭二が(そして観ている私たちも!)一瞬ドギマギさせられたあのシーン。ちまきを一緒に作り、祭りの夜をともに歩く。そんな何気ない時間が、二人をかけがえのない絆で結んでいったのでしょう。
伝統を守る厳しさと、その中で育まれる感情。 今年の夏、皆さんもぜひこのドラマを携えて、京都の祇園祭を歩いてみませんか? そこにはきっと、画面越しでは伝わりきらない「本物の感動」が待っているはずです。

