第1シリーズ第4作目にあたる「月夜の告白」は、 京都人にとって特別な存在である「月」をテーマに、中秋の名月から後の名月へと続く季節の移ろいを描いたエピソードです。
月を愛で、行事を重ね、静かに祈る。 そこには派手さはありませんが、京都らしい“暦とともに生きる感覚”が、丁寧に織り込まれています。
シリーズについて詳しくはこちら➡『京都人の密かな愉しみ』とは ― 美しい映像と音楽、季節をめぐる祈りと暮らし。その全体像をじっくり解説 ―
第1シリーズ、他のエピソードはこちら➡『京都人の密かな愉しみ』第1シリーズ再放送記念― 京都に息づく「祈り」と「癒し」をたどる旅 ―エピソード1 ➡『京都人の密かな愉しみ 夏』ロケ地めぐり ➡「京都人の密かな愉しみ 冬」ロケ地めぐり ➡「京都人の密かな愉しみ 月夜の告白」ロケ地めぐり ➡「京都人の密かな愉しみ 桜散る」最終話ロケ地めぐり
目次
興聖寺 — 宇治に身を寄せるヒースロー先生
前回からヒースロー先生(団時朗さん)は、エミリー(シャーロット ケイト フォックスさん)から逃れるように宇治へ。
身を寄せているのは興聖寺です。
中秋の名月には芋を、後の名月には豆と栗を。
寺男として台所に立ち、季節の食を整える先生の姿は、どこか可笑しく、そして温かい。
月を眺め、暦に従い、同じことを繰り返す。
その単調さが、心を整えていくことを、この場面は静かに教えてくれます。
興聖寺について
宇治川沿いに佇む興聖寺は、「琴坂」と呼ばれる参道が印象的な禅寺。
観光地でありながら、少し奥へ入るだけで、時間の流れが緩やかに変わります。
中秋の名月と後の名月 — 月を二度愛でる京都
京都では、月は一度きりで終わりません。
中秋の名月(旧暦8月15日)
後の名月(旧暦9月13日)
中秋には芋を供え、後の名月には豆や栗を供える。
どちらか一方だけを見る「片見月」は縁起がよくないとされ、
両方そろってこそ、月見は完成すると考えられてきました。
「月夜の告白」は、この京都独特の感覚を、
説明ではなく“暮らしの風景”として見せてくれます。
重陽の節句 — 九月九日の菊の祝い
重陽の節句とは
9月9日は「重陽(ちょうよう)の節句」、別名「菊の節句」。
奇数の中で最も大きい「九」が重なることから、古くはとても縁起のよい日とされてきました。
(偶数が陰、奇数が陽と考えられているそうです)
菊は長寿や無病息災の象徴。
菊酒をいただき、菊花を供え、
秋の深まりとともに心身を整える――
京都では今も大切に受け継がれています。
菊の花がつなぐ、京都の美意識
頂法寺(六角堂)と池坊 — 菊を「生ける」時間
菊の流れで登場するのが、頂法寺・六角堂と池坊。
ここでアナウンサー井上あさひさんの、菊の花を生ける場面が登場します。

頂法寺(六角堂)について
京都の中心にありながら、静かな空気が流れる古刹。
華道・池坊発祥の地として知られ、「花を通して心を整える」場所です。
重陽の節句で紹介された寺社
上賀茂神社 — 烏相撲の神事
重陽の節句に行われる「烏相撲」。
烏の鳴きまねや烏飛びの所作を行われた後に、子供が相撲を取ります。
斎王代が参列し、神代の世界につながる厳かな神事です。
車折神社 — 重陽祭
芸事の神様として知られる車折神社でも、菊にまつわる神事が行われます。
芸と健康、どちらも大切にする京都らしさが感じられます。
法輪寺 — 菊花供養
嵐山の法輪寺では、菊花供養が営まれます。
静かな境内に並ぶ菊が、秋の深まりをそっと知らせてくれます。
オムニバスドラマ「月待ちの笛」
出会いの舞台:鴨川・荒神橋
十六夜の晩、鴨川の河原。
古美術商の妻・鵠沼待子(本上まなみさん)が月の昇るのを待ってると
二宮聖(安藤政信さん)の吹く能管(のうかん)という横笛の音が聞こえてきます。
待子が鴨川を見下ろしたのが荒神橋。
川の流れ、沈みゆく夕暮れ、そしてまだ昇ってこない月。
物語:月を待つということ
祇園通いする夫への不満があった待子は二宮に惹かれますが、実は亡くなった妻への想いを消せずにいる二宮。
二宮は「あの世の音」が出せるという能管を吹いていて出会った待子に、亡き妻の面影を見ているのですが、
二十六夜、最後に二宮は能管を壊します。
河原ですごした時間が幻だったかのように、それぞれの人生に向き直っていきます。
待子さんがとても美しい。
「月待ち」とは、月が昇るまでの時間そのものを味わうこと。
京都の街並みに浮かぶ月が美しく、静かな名作です。
久楽屋 — 後の名月の夜に交わされる告白
後の名月が昇った夜。
久楽屋では、三八子(常盤貴子さん)と母・鶴子(銀粉蝶さん)が、月明かりの中で夜なべ仕事をしています。
ぬか袋を縫いながら、鶴子はぽつりと店をたたむ事を考えていると告げます。
これまで三八子の縁談を願い、暖簾を守ってきた母の言葉。
驚き、怒る三八子に、鶴子は静かに続けます。
「やりたい事や、夢があるんやろ
あんたを自由にしてあげたい
その夢が叶えられたらええなあ」
胸に残る、忘れられない台詞です。
三八子のかける国際電話はつながらず、エアメールの束だけが映る。
秘密を残したまま、物語は静かに次へと向かいます。
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京都人の密かな愉しみ 月夜の告白 まとめ
「月夜の告白」は、
何かが起こる物語ではありません。
月を待ち、花を生け、
季節の行事を重ね、
言葉にできない想いを抱えたまま生きる。
そのすべてが、京都の時間です。
ロケ地を巡る旅は、
月を見る旅であり、
自分の人生のリズムを思い出す旅でもあります。
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